会社に上司Tの友人がやってきた。
たいていはパチンコの話をしにくるのだが、
今日の用事はご商売だ。
私と上司は、いつもこの人からラーメンを買っている。
全国各地の名物ラーメンが、毎月三種類ずつ、4ヶ月間届けられるシリーズだ。
当たり外れはあるけれど、結構おいしいし、いろいろ楽しめる。
「すまんけど、また頼むわ~」
また新しいシリーズらしい。
ラーメンはいつも秋からで、今の時期は冷やし中華だ。
そう思ってリーフレットを見てみたら・・・
がーん!
今回は、なんと『つけ麺』だ。
三種類が三ヶ月。
豚の角煮パックとちょいとしたトッピングがついてくる。
しかし、ウチは夫婦でつけ麺が大嫌いなのだ。
以前、二人で飲みに行った帰り、小腹が減ったのでラーメン屋に入った。
私は普通のラーメンを注文したが、『軽いもの』でいいと思ったちづるは、
発売が始まったばかりのつけ麺を選んだ。
食べ始めてすぐ、ちづるが私にささやいた。
「もう、よう食わん・・・」
そういうことならまかしとけ。
私は自分のラーメンを食べたあと、ちづるの残りをいただいた。
まずい。
あまりにもまずい。
映画でも落語でも初めて行ったお店でも、
その評価を交換しあうのが我が家のしきたりだ。
つけ麺についてもじっくり話し合い、結論が出た。
これは、あの店のつけ麺が特別まずいのではなく、
つけ麺という料理自体の理屈がまずいのだと判断した。
つまり、どんな名人がどんな食材を使っても、
決しておいしくなることはないということだ。
一時期あった『ざるラーメン』ならまだわかる。
冷やした中華麺をざるそばのように冷たいつゆにつけて食べるのはいい。
でも、つけ麺は冷たい麺を暖かいスープにつけて食べる。
だから、一口目から必ずぬるい。
まるで誰かの食べ残しを食べているみたいだ。
まあ、私はちづるの食べ残しを食べたのだが。
ちづるはぬるいものを毛嫌いする。
あるラーメン屋でチャーシューをトッピングしたら、
その分温度が下がったと言って怒っていた。
焼酎のお湯割りも、濃さよりも温度を重視するため、薄いお湯割りになっている。
こんな状況でつけ麺を注文したらどうなることか。
守銭奴のちづるは、ラーメンでもあまりいい顔はしない。
「オマエガ買ッテ、ナゼ家計デ?」
と、眉間のしわで訴えかけてくる。
もしつけ麺だったら、決して予算は出ないだろう。
ふと見ると、リーフレットは2枚重ねになっていた。
後ろにもう一枚、レトルトのカレーだ。
しめた!
「んじゃワシはカレーにしよっと」
わざわざ声に出して注文書を書いた。
本当は両方買って欲しかったんだろうけど、
そんなことしたら共倒れで、両方自腹になってしまう。
カレーだけだったらにらまれるぐらいで済むはずだ。
テレビのグルメ番組などでは、今、つけ麺はもてはやされている。
おそらく流行なんだろう。
でも、先ほど述べたように、つけ麺は論理的においしくないはずだ。
なんとか来年の今頃までにはブームを終わらせてもらいたい。
できたら、ちづるの好きなビーフンが流行ってもらいたい。

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こみさんの説明を読んで、私はつけ麺を食べたことが
ないと言うことがよく分かりました(笑)
前半を読みながら思い描いていたのは冷やし中華だった。
コレならちづるさんもOKなんですよね?
ちなみに私もビーフン大好きです!