私が今の畑に移ったころは、周りに民家は一軒しかなかったが、
バイパスに通じる道ができて以来、ぽつぽつと家が建ち始めた。
それがまた、今風というかハイカラというか、
田畑の真ん中に建てるにはしゃらくさい、コンチクショーな家たちだ。
家が増えると人も増える。
以前はトラクターか軽トラしか通らなかった道を、
犬の散歩やジョギングの人が通るようになった。
なんだかんだ言っても、ご近所の人のはず。
目が合ったら挨拶をすることにしていた。
きのう、私がダイコンの間引きをしていると、
黒くて小さくてピキピキ動く悪魔のような犬を連れたおっさんが散歩していた。
「こんにちわ」
と挨拶を交わし、作業を続けていると、そのおっさんがこっちを見ている。
ひょっとして、このダイコンの葉っぱが欲しいのだろうか。
葉っぱを入れていたかごがいっぱいになったので車に運ぶ。
おっさんは車のそばにいる。
「○○さん?」
そのおっさんが私の本名を呼んだ。
この不意打ちにはびっくり。
え?はい?うーあーどちらさんでした?
と、しどろもどろになっていると、
「○○です」
ワンテンポの間をおいてハタと気づいた
おおー、なんと中学高校のクラブの後輩だ。
こりゃまた懐かしい、がなぜここに?
「そこの家に住んでるんですよ」
ええっ、あの家に?
カントリー風のテラスがあり、暖炉かストーブ用の薪が積んである、
おしゃれでセンスのいい白亜の豪邸に?
そういえば、見た目もダンディで、まるでどこかの若社長だ。
この可愛らしさと凛々しさをあわせ持つ犬を連れた姿も様になっている。
片や私は麦わら帽に長靴で農作業。
まあ、この姿が最もよく似合うと言われてはいるのだが、
はた目には、まるで地主と小作人のようだ。
そう思った人にはもっと近寄ってもらいたい。
あちらが敬語を使っているから。
それにしても世間は狭い。
これだけ近いんだから、また顔も合わすだろう。
それじゃまた、と別れ際、
「そうや、ダイコンの葉っぱ、持ってく?」
ときいたら、
「いえ、いいです」
と遠慮された。
ダイコンができたら届けてやろう。

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素直に栄養価の高い葉っぱもらっておけばいいものを断りやがったよ(笑)
根っこが欲しかったのだろうか・・