とりあえず目が覚めた。
リビングのホットカーペットだ。
ちづるが毛布を掛けてくれたらしい。
外はもうずいぶん明るい。
でも、そのままでいる。
しばらくすると二階で人が動く気配を感じた。
ちづるがのしのしと階段を下りてくる音が聞こえる。
リビングの戸が開いて、ちづるがこう言った。
「9時過ぎとる」
えらいこっちゃ。
この日は母の面接予約が10時半にとってある。
普段だと実家に行って風通しをしてから施設に行くのだが、そんな時間はない。
施設に直行したとして30分はかかる。
とりあえず起きなくては。
パンを食って、チャッと風呂に入って、雑な更新をして、歯磨き髭剃りをして、
あっという間に出発時間だ。
前日に買っておいたお菓子と冬の上着を忘れないように。
10時半をほんのちょっとだけ過ぎて施設に着いた。
車を降りたら、食堂の日当たりのいいところにいる母を見つけた。
手を振るとわかったらしくて、振り返してくれた。
見知らぬおっさんも振り返してくれた。
受付をするとスタッフさんが母を連れて来てくれて、部屋で面会だ。
買ってきた冬服を見せると、1着は「こわい」と言われてしまった。
毛足が長いから、ケモノっぽいと思われてしまったのかもしれない。
もう一着の方はとても気にいってもらえたようで、丁寧にたたんでいた。
クローゼットに入れると忘れてしまうだろうから、カラーボックスに入れておいた。
あっという間に面会時間は終了だ。
「時間ですよ」とストップがかかるわけではないが、スタッフさんは忙しいから迷惑はかけられない。
それに、すでに同じ話を何度も繰り返している。
「また来るからな」「また来てな」と玄関で見送ってもらった。
二日酔いだということはバレなかったようだ。

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