歯医者の予約は6時半だったので、自転車でもいったん帰宅できた。
身だしなみにブレスケアを飲んで歯を磨いたが、服は仕事のままでいいだろう。
6時ちょっと過ぎに家を出て、6時もうちょっと過ぎに到着した。
案外近いものだ。
前回来たときも早く着いたがすぐに呼んでくれたからそんなに待たないでいいだろう。
受付をしてソファで待つ。
荷物を最小限にしたかったので、文庫本は持ってきていない。
本棚があったのでなにか読むものはないかと見てみたが地元タウン誌と歯がらみの絵本ばかりだ。
仕方がないので目の前にある水槽を眺めていることにした。
大きな水槽だった。
長さは1メートル以上あるだろう。
中はジャングルのようにいろんな水草がみっちり茂っていて、ガラスにタニシがくっついていた。
なるほど、あいつにガラス掃除をさせているのだな。
それにしても他に生き物はいないのか。
目を凝らして探してみると、グッピーのような小さな魚が一匹泳いでいた。
いや、エビらしい。
白地に赤い柄のある小さなエビだ。
よく見たらあっちの葉っぱの上にも、こっちのみずくさのすきまにも、
いやいや、まるで蚊柱のようにエビだらけではないか。
なんでさっきまで一匹もいなかったのか。
私に見えていなかっただけなのか、と思ったが、今はちらっと見ただけでエビまみれだとわかる。
これが見えてなかったはずがない。
ははん、わかったぞ、私が入ってきたときに危険を感じて隠れていたな。
そして、そろそろと様子を見ながらでてきたのだ、臆病者めが。
では、名前を呼ばれたら診察室に行くときに驚かせてやろう。
エビがクモの子を散らすように逃げ惑う姿を見てやろう。
と思ってたら、診察の終わった女性がドタバタとやってきてドカンとソファに座った。
と思ったらすぐに名前を呼ばれてビョーンと飛んでいきガランゴロンと帰っていった。
エビはそのままいる。
私は今の女性よりは静かに入ってきたという自負がある。
あれで隠れないのなら、なぜ私の時に隠れていたのか。
そうか、あの女性が待ち時間に水槽を覗いたのだろう。
で、その影におびえたエビどもは隠れてしまっていたのだ。
私が来たときは、やつらがそろりそろりと出てきたところだったのだ。
ちょうど私の名前が呼ばれたので、水槽に直進して脅かしてやった。
でもエビはそのままいる。
診察が終わって戻って来てもそのままいる。
あちらこちらにいっぱいいる。
なんで最初いなかったのだ!

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…ちょっと違うけど、アイザック・アシモフの「夜来る」を思い出した。