母はなんでも折りたたむ。
レシートも、鼻をかんだティッシュも、食べ終わったお菓子の袋も。
退屈なのかもしれない。
食卓で飲んだ薬の袋を折りたたんでいた。
縦に細長く折ってから三角のジャバラに折っていた。
どこも留めていないので「広がってくる」と困っていた。
私は「捨てたろ」と言って右手を出した。
私の席の後ろにビニールゴミを捨てる箱がある。
母は左手に持ったジャバラの薬袋を私の右手に乗せた。
薬袋と左手を私の手に乗せたまま、母は私を見つめている。
疑問を感じているような、不信感を持ったような表情だ。
でも何も言わずに手を乗せている。
母が右手を添えて、私の指を折りたたむ。
たたんだ指が薬袋を覆うように。
ああ、母はゴミが広がらないようにしたかったのだ。
あの疑問と不信感は、
「なんでこいつこのゴミを握らないのだろう。広がってくるのに」
ということだったのだ。
母に指を曲げてもらったおかげで、ゴミは私の掌中に納まっている。
私はゴミ箱のふたを開け、薬袋を捨てるために手を開いた。
ジャバラに折ってばねのようになっていた薬袋はびよーんと飛んだ。

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トケ井自らビックリ箱ってのは珍しい。
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