実家に着いたら、珍しく玄関横の部屋の明かりが消えていた。
買ってきた食料と取り込んだ新聞を持ったまま暗い部屋に入り、蛍光灯をつけた。
仏壇に線香をあげて手を合わせる。
さて…
!っ
っくっ ふ も ほ。
結構なサイズのタコではない八本足の生物『くふもほ』が部屋の隅、畳の上にいる。
母の座る椅子の陰になっていて気付かなかったのだ。
放っておきたいけど放っておいたらまた出るに違いない。
だからといって母に退治できるはずがない。
そうなのだ、ごくまれにどうしても自分でやらねばならない事態が巡ってくるのだ!
荷物を持って奥に行く。
「おお、なんや、来てくれたんか」
「それはともかくちょっと待って」
ほうきを手に、表の部屋に戻る。
奴はまださっきのところにいる。
一撃で仕留めるのだ。
バン!…ちら、うぎゃー-生きとる!バシバシバシバシ走ったー!
うおおおお、ドカバキグシャ椅子ひぃぃぃ~ガシガシくおおーっバンッ!
……やった。
奥へ行く。
「どうした」
「膝が痛いときになんやけど、頼みがある」
「なんや」
「クモを退治したのだがそれを片付けて欲しい」
「そんなん、ほったったらええやないか」
「それができないのだ」
「なんやなさけない」
「なさけないのだ」
左手にちりとり、右手に母を連れて表の部屋に行く。
「あれはなんや」
「クモや」
「死んどるんか」
「死んどる」
「そしたらほったったらええやないか」
「それができないのだ」
「なんやなさけない」
「なさけないのだ」
「あれはなんや」
「クモや。トイレに流してほしい」
「トイレに流すのはいやや」
「そしたら外に捨てて」
「そこのゴミ箱に…」
「ダメだ!」
「なんでや」
「ゴミを回収するのはワシやないか」
「なにをや」
「アレや」
「アレはなんや」
「クモや」
「生きとるんか」
「死んどる」
「そしたらほったったらええやないか」
「だ・か・ら」
「アレはなんや」
「死んだクモや。このちりとりで取って窓から捨てて」
「変な子やな」
母がちりとりにとる。
「その左の窓を開けて捨てて」
「何をや」
「それ」
「これはなんや」
「クモ」
「クモ?」
「その窓から捨てて」
「あんたの車があるよ」
「ぬうう…なるべく遠くに捨てて」
「なにを?」
「そのちりとりのクモを」
「これはなんや」
「クモや!」
短縮バージョンでお伝えしています。
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でもやっぱりと言うことならば、塵取りの柄が短いのがアカンのやろ?(塵取りの中へ履き寄せる時に自分の手にかかりそうな気がして)
そやったらあのゴミ拾い用の火ばさみ(とっても柄の長いやつ)を常備しとくのはどうでしょか。(感触が伝わりそうでイヤかしらん)(そもそもバラバラ事件になってたら対処できんなぁ)
などと目の前に光景が広がる文章を並べ立てたらいやがらせみたいやんな。