母は独り言が多い。
居もしない誰かとの会話は別にしてだ。
今日「仕事が終わってから行く」と電話したときも、
話が終わってから受話器に耳を当てたままにしていると、
「……そやけど遠いからかわいそうやねえ」
と言いながら切れた。
実家に行って、スーパーで買ったカキフライにタルタルソースをつけてやった。
母はそれを箸で全体に広げようとする。
カキフライが動いて皿から落ちそうになる。
「逃げたらいかんよ」
そんな母の血を受け継いでいる私ももちろん独り言が多い。
思い出し怒りをして「ナニヌカシトルンジャアホンダラ」的なのもよく使うが、
品のいいおしゃれで小粋な独り言の使い手でもある。
達人と言われても否定はしないつもりだ。
今日も仕事中に大きな声でこう言った。
「よし、この仕事をしよう」
なんと前向きで積極的な良い独り言だろう。
とはいえ、これだけでは達人とは呼ばれない。
私の独り言には続きがある。
「は~い」
前向きがさらに肯定された。
人数が増えたようにも聞こえるし、作業に困難がある気がしない。
独り言なのに二人分しゃべっているところが、母の性質に似ているようでもある。
しかも、これで終わりではないのだ。
「なに言うてんねん!」
ツッコミである。
ここで終了であることがわかり、実際に仕事に取りかかりやすい。
ここまでをひとまとめで独り言できる、これこそが達人なのだ。
というネタを思いついた。
仕事中にこれを練って何とか使えるようにしようと、頭の中でまとめていた。
それがずっと口から出ている私なのである。

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