もういつもの居酒屋にもずいぶん行っていない。
と、Мえからピンチ情報が入った。
私があげていた注文書き用の端紙が尽きたらしい。
そんなものは会社で捨てるほど出るのだから持って行ってやろう。
妙な話だが別の店でМえと落ち合って、いつもの居酒屋に連れて行ってもらった。
いつもの居酒屋では納品するだけで飲まない。
その代わりに女将さんとバイトのR子ちゃんから紙袋をもらった。
貸していた本を返してくれたのだ。
この二人は本を読まない。
ずいぶん前のこと、読書派の酔っ払いと二人で「本は良いよ~」と推し推しした。
トリックとかストーリーとかとは別に「ずっと読んでいたい」って本がある、と。
すると、そんな本があるなら貸してほしいと言われて貸したのだ。
女将さんには伊坂幸太郎の『ガソリン生活』
R子ちゃんには森見登美彦の『夜は短し恋せよ乙女』
で、結局二人は読まずに返してくれたのだった。
紙袋に一緒に入っていた女将さんの箸と、R子ちゃんの缶詰は、
「貸してくれてありがとう」より「読まなくてごめん」という意味だろう。
おそらく『ガソリン生活』は厚すぎて、『夜は短し~』は難解すぎたのだろう。
いい本が手に入った。
薄くて読みやすくておもしろい今村夏子の『むらさきのスカートの女』だ。
なんと芥川賞受賞作だ。
本屋をフラフラしていたらなんだかたくさん平積みしてあって、
帯には、
「何も起こらないのに面白いとTikTokで話題沸騰!」
と紹介されていた。
たいてい私が惹かれるのは『驚愕のどんでん返し!』とか、
『超絶の大トリック!』といった売り言葉なのだが、
この『何も起こらないのに面白い』というのには興味を持ってしまった。
いやまあなんだろう、このけったいな小説。
なんだか続きが気になって、会社だけでなく家でも読んでしまったので、
あっという間に終わってしまった。
次に貸してくれと言われたらこれにしよう。
でもまずはちづるに渡す。
ちづるのところには私が勧めた本が渋滞しているから、
感想を聞くのはかなり先の話になるだろう。

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