▼ 存在
どうしてそんなことをしたのか理由は忘れたが、
ベッドの横のゴミ箱を少し動かした時に、私は思わず身を固くした。
「なにかいる」
ただし、一目で私の苦手な『足多い系』でないことは見てとれた。
じゃあ、どういう系の生き物なのかと問われたら、
「一番近いのはヒツジ」
と答えるしかあるまい。
そこにいたのは“ワタボコリ”だったのだ。
とはいえ、ワタボコリとしては立派なやつだった。
そもそもワタボコリというのは輪郭のはっきりしないぼんやりとした存在だ。
わずかな空気の動きでゆらゆらと移動する“部屋クラゲ”みたいなものだ。
いや、海に“タコノマクラ”という棘皮生物がいるのに対抗して、
“ネズミノクッション”というのはどうだろう。
そのぐらいよく育ったワタボコリだった。
そうそう、近いのといえば、ポケットから出てくるミニチュアワタボコリだ。
やつは圧縮されているから当然あの形になる。
では、ここにいるこいつはどうしてこんなに存在感があるのだろう。
まず、存在理由の一番は、掃除ができていないということだろう。
こんな発言をすると、ちづるに叱られるから言い訳しておくが、
やつの居る場所は斜めに置いた四角い段ボール箱(私の本棚)と、
丸い金属製ゴミ箱の間にできた三角地帯の隅なのだ。
いわば「おまえが掃除せい」と言われる地域だ。
なのに私は掃除をしたことが無い。
ルンバとて無理だろう。
だからこいつはこんなに育つことができたのだ。
しかし、いやな気はしない。
なぜなら、ワタボコリというやつは人間に従順だ。
手でつまんでゴミ箱にポイできるし、掃除機にも素直に吸われる。
なにしろ輪ゴムを巻いたただの棒にだっておとなしく従ってついてくるのだ。
これが生ゴミや排水溝の髪の毛ならとてもそういう訳にはいかない。
だから人はワタボコリに愛着を持っているのかもしれない。
部屋の隅っこでじっとしてたり、時々フワフワ舞ったりする。
ああ、私もああなりたい、なんて思う人もいるのではないだろうか。
そんなことを考えてしまったものだから、私はそっとゴミ箱を元の位置に戻した。
数日後、「そうだ、あいつのことをブログに書こう」と思った。
やつを描写するために、もう一度会っておいた方がいい。
それを珍しく覚えていた私は、寝床に入る前に、そっとゴミ箱をどけてみた。
「あっ、いない!」

↑会社の逆立ちするところにも大物がいるんだけどクリックしてね。

ベッドの横のゴミ箱を少し動かした時に、私は思わず身を固くした。
「なにかいる」
ただし、一目で私の苦手な『足多い系』でないことは見てとれた。
じゃあ、どういう系の生き物なのかと問われたら、
「一番近いのはヒツジ」
と答えるしかあるまい。
そこにいたのは“ワタボコリ”だったのだ。
とはいえ、ワタボコリとしては立派なやつだった。
そもそもワタボコリというのは輪郭のはっきりしないぼんやりとした存在だ。
わずかな空気の動きでゆらゆらと移動する“部屋クラゲ”みたいなものだ。
いや、海に“タコノマクラ”という棘皮生物がいるのに対抗して、
“ネズミノクッション”というのはどうだろう。
そのぐらいよく育ったワタボコリだった。
そうそう、近いのといえば、ポケットから出てくるミニチュアワタボコリだ。
やつは圧縮されているから当然あの形になる。
では、ここにいるこいつはどうしてこんなに存在感があるのだろう。
まず、存在理由の一番は、掃除ができていないということだろう。
こんな発言をすると、ちづるに叱られるから言い訳しておくが、
やつの居る場所は斜めに置いた四角い段ボール箱(私の本棚)と、
丸い金属製ゴミ箱の間にできた三角地帯の隅なのだ。
いわば「おまえが掃除せい」と言われる地域だ。
なのに私は掃除をしたことが無い。
ルンバとて無理だろう。
だからこいつはこんなに育つことができたのだ。
しかし、いやな気はしない。
なぜなら、ワタボコリというやつは人間に従順だ。
手でつまんでゴミ箱にポイできるし、掃除機にも素直に吸われる。
なにしろ輪ゴムを巻いたただの棒にだっておとなしく従ってついてくるのだ。
これが生ゴミや排水溝の髪の毛ならとてもそういう訳にはいかない。
だから人はワタボコリに愛着を持っているのかもしれない。
部屋の隅っこでじっとしてたり、時々フワフワ舞ったりする。
ああ、私もああなりたい、なんて思う人もいるのではないだろうか。
そんなことを考えてしまったものだから、私はそっとゴミ箱を元の位置に戻した。
数日後、「そうだ、あいつのことをブログに書こう」と思った。
やつを描写するために、もう一度会っておいた方がいい。
それを珍しく覚えていた私は、寝床に入る前に、そっとゴミ箱をどけてみた。
「あっ、いない!」

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