いつもの居酒屋に行くと大変なメンバーが並んでいた。
ヒゲを伸ばしたハゲ。
髪が多いのに剃っている人。
ボウズ頭の若者。
そこに私が連なる形になった。
おかげで常連さんが店に入ってくるたび、
「おう、今日はなんの会合や」
「えらいグループができとるのう」
「そういう店やったっけ」
とまとめておもちゃにされていた。
さて、この店では来店するとすぐに細長いカゴ状の入れ物でおしぼりと箸が出てくる。
私の箸はバイトのMちゃんにもらったマイ箸だ。
そして、自分で持ってきた箸置きもセットにしてもらっている。
ちょっと大きめのソラマメの形をした瀬戸物だ。
さあて、手を拭いて箸をセッティング、と思ったときに気がついた。
ソラマメの端っこに何かが着いている。
いや違う、何かが書いてあるのだ。
手にとって見てみると、
「ハゲ」
とボトルキープ用のマジックで書かれていた。
「なんじゃこりゃー!」
と叫ぶと、横から覗き込んでくるハゲたち。
女将さんもバイトのMちゃんも大笑いだ。
さて、こんなことをした犯人は誰か。
全員一致で、もうひとりのバイト“Eちゃん”に違いないと結論が出た。
そういや、前回来店したときのバイトはEちゃんだった。
奴は毒舌が売りで、並み居る常連のおっさん達を手玉にとっている。
皆が口々に、
「あいつが犯人に決まっとる」
「あいつは悪い奴や」
「いかにもあいつがやりそうなことや」
と、罵っている。
Mちゃんですら、
「そんな事するのEに決まっとるやーん」
と太鼓判を押してくれた。
ところが、女性客のN子さんが、
「何言っとるの、嬉しいくせに~」
と言い出した。
あんな若くて可愛い子にいじられてたまらんやろ、というのだ。
確かにEちゃんといえば、色白黒目がちの19歳だ。
たまらん。
まわりの者たちも、ひょーひょーとはやし立てる。
「なかなかあんな若い子が相手してくれへんで」
「いじられとるうちが華やがな」
「ほかにそんなことされとる人おらへんやろ」
そこへ、常連の大物がやってきた。
薄くなってきたから剃っちゃったAさんだ。
これはAさんにも伝えなくてはならない。
「ちょっとAさん、これ見て」
「知っとる」
「ええっ?もう知っとるの?」
「オレが書いた」
「は?」
「この間、あんたが帰ってからオレが書いた」
コノヤロウ。

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悲劇はそのあとにやってきます
人生とは 悲しいですね