ああ、片付けなくては、片付けなくては。
季節が変わるから片付けなくては。
私の部屋の電気ストーブは水を入れて湯気が出るタイプ。
古いけど加湿器の役目も果たすすぐれものだ。
でも、この水が残っているとややこしい。
だから全部蒸発させておかなくては。
だからそんなに寒くない朝でもつけておかなくては。
徒歩通勤で着ていたヤッケ。
風と花粉を防御するのに役立つが、道のりの四分の一も歩いたら暑くて着てられない。
もう役目は終わりだろう。
しかし、水をはじくこの衣類、洗ったほうがいいのだろうか。
ポットに蒔いたソラマメ、エンドウ、ニンニクの苗。
蒔くのが遅すぎて、植え替えが遅すぎて、もう今からでは育たない。
とはいえまだ枯れてはいない植物だ。
このまま捨てるのは可愛そうな気がする。
で、片付けたあとで後悔するのがこの季節だ。
片付けるための洗濯が終わったあとで、寒の戻りがやってきて復帰。
と思ったら、翌日にはまた暖かくなって不要になる。
風が強くてヤッケを着て出勤すると、すぐに汗だくになる。
苗を捨てたら、そこでどんどん成長する。
食卓の上にも片付けたいものがあった。
ちづるが結婚式の引き出物でもらってきたバームクーヘンだ。
開封したら早くて食べなくてはいけない。
しかし、一度にたくさんは食べられないし、毎日続くのも苦痛だ。
それよりも、ハート型をしているこれ、ナイフがついているが切ってしまってもいいのか。

丸ければだいたい角度で切り取っていけばいいが、ハートは左右対称だ。
私とちづるが正確に分けようと思ったら、ライトとレフトに真半分にしなくてはならないではないか。
結婚した二人にとってこれは不吉なことではないのか。
愛し合うふたりのハートをキザキザの刃物で真っ二つにし、
それを毎夜、ニタリニタリとしながら少しずつかじっていく。
我々は悪魔か。
しかもバームクーヘンというやつは何重もの層になっている。
子供の遊び食いではないが、前歯で一層ずつはがしながら食べたくなるものだ。
この場合、歯の並びとバームクーヘンの形状から言って、
どうしても内側からはがしていくことになる。
食卓の座り位置で考えると、私がもらえるのはハートのライト側だ。
その一部を切り取り、内側から一枚ずつはがしていく私。
右心房内壁剥離ではないか。
愛し合うふたりのハートを右心房内壁剥離。
なんたる残酷な悪魔のテーゼ。
あ、だからなのだろうか、
このバームクーヘンのマークとして描かれている天使が、
「あ、ちょっとそれ、やめたって」
みたいなポーズをしているのは。

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そしたらグジグジ思い悩まんで済むやろ。
胃がどぉんとして胸が重うなるかもしらんけど。