先日、仕事中に消しゴムが必要になった。
やっと見つけたのはホコリマルケで真っ黒。
仕方ないので、ナイフで周りをぐるりと削って使った。
そのとき、ズキューン とよみがえったあの感触。
ああそうだ、私は以前にも消しゴムを切ったことがある。
ノスタルジックでサディスティックな記憶・・・
ほわ ほわ ほわ (回想へ)
文房具の二大巨頭は鉛筆と消しゴムだ。
ノートに下敷き、ハンカチとちり紙のように切り離せないコンビだ。
しかし、実際は同列の扱いだったろうか。
真っ白で箱入りの消しゴムを、とんがった鉛筆は上から見ていたのではないだろうか。
鉛筆のしでかしたミスをフォローし続けた消しゴム。
決して驕ることなく、ただ職務に忠実だった消しゴム。
消しゴムは鉛筆と組んで仕事をすることを本当に喜んでいた。
だがある日、鉛筆はとんでもない姿で消しゴムの前に現れた。
「オレ、今日からこいつとやってくから」
それは鉛筆の端っこに付いた小さな消しゴム。
肌色で粒子の粗い、仕事のできない奴だった。
小さくて使いにくい。
消したところが黒く汚れる。
あげくに根っこから折れてしまった。
鉛筆は反省した。
やはり相方は消しゴムしかいない。
だがそこに恐るべきライバルが登場した。
シャープペンシルだ。
削る必要がなく、デザインが豊富なシャープペンシルは、
またたく間に生徒の筆箱を席巻した。
みんながあのカチカチ音に萌え~だった。
シャープペンシルにもノック部分の中に消しゴムがあった。
だが人々は騙されなかった。
消しゴムは消しゴムの方が使いやすいということに気付いたのだ。
めでたしめでたし、のような話だが、実はそうではない。
消しゴムには表に出せない、辛く苦しい裏歴史が存在したのだ。
古くは肥後の守やボンナイフの試し切りに使われた。
それは相手がカッターナイフに変わっただけで、今も行われている。
鉛筆には何度も刺された。
中には折れた芯が体内に残ったままのツワモノもいた。
シャープペンシルにも刺された。
刺されたままの状態でカチカチもされた。
ボールペンに刺されると、そこがホクロのように黒くなった。
そのままいじられていると、そのうち傷口がひびになり、
やがてポッキリと折れた。
いっそコンパスの金属の針に刺された方が、傷口がきれいなだけましだった。
中には、短くなった鉛筆を持ちやすくするための・・・なんやらで、
消しゴムのまん中をくりぬく輩もいた。
ほわ ほわ ほわ (現在へ)
消しゴム、今も元気でやっているだろうか。
あの恐ろしい時代を生き延びた消しゴムたち。
私も、自分のことながらあの世界には戻りたくない。
あの、小学生男子の世界には。

↑過去は消せないけどクリックしてね。
スポンサーサイト