あー、飲みに行きたい。
いや、飲みに行かねばならない。
というのも、ちづるが退職したときに、社長さんが餞別で、
「飲んでおいで」とある店に先払いしてくれたのだ。
いつもの居酒屋よりちょっと高級な居酒屋だ。
なにしろ本当はそんな商品券的システムはやっていない。
それを無理言ってしてもらっているらしいので、早く使い切らないと迷惑だ。
何度か行ってあと一回で使い切るという頃、毎日実家に行くようになった。
実家には、平日はちづるが午前中に行って、着替えや洗濯をしてくれている。
私は仕事が終わってから行き、夕食を食べて寝かしつけてくる。
以前、べらぼうに早く寝て、日の変わらないうちに起きだしてきたので、
私が時間調節をして8時ごろに寝るように誘導している。
休日は二人で二回行く。
土曜は昼前に行って、昼食後母に入浴をさせる。
これが長引くとそのまま夕食まで実家にいるのだが、昨日はすんなり話が進んだ。
時間に余裕ができたのでいったん帰宅し、ダイコンを収穫して配った。
そこでちづると相談だ。
土曜日であることだし、ちょっと早めに母を寝かして飲みに行くというのはどうか。
もちろん母が寝付かなかったら放っておくわけにはいかないから中止だ。
とりあえずそっち方向に持って行くように作戦を練った。
5時に家を出て実家に着いたのは20分ごろ。
母にトイレにいってもらい、雨戸を閉めてふとんに乾燥機をかける。
そしてすぐに夕食の準備に取り掛かる。
むずかしいのは配膳だ。
なにしろ私たちはこれから飲みに行くのだから、お腹を膨らましたくはない。
しかし母は自分だけが食べて私たちが食べないというのは不審に思うだろう。
だから私たちはあまり食べないで、食べている感を出す。
おかずは煮物が2品、これを三人でつつくという体にした。
みそ汁はそれぞれに用意し、母はごはん、私とちづるはノンアルコールビールだ。
で、食後、なんとなくけだるく眠い空気を作っていく。
「お腹がふくれると眠いねえ」とカマをかけると、母も「眠たいな」という返事だ。
とはいえ6時台に寝ていたのでは早すぎる。
「眠いけどまだ寝られない」という雰囲気で、眠さをミルフィーユしていく。
7時になって行動開始。
まずは私が母をトイレに誘導し、そのあとちづるが着替えさせる。
そして私が「ふとんポッカポカ」という誘い文句で母を寝室へ。
その間にちづるが明日の準備をする。
作戦は成功、8時前に家に着き、それから歩いてその店に向かった。
普段なら開店早々に行っているので「遅い時間ですね」と言われ、
これこれこういうわけでなかなか来られなくて、と事情を説明することもできた。
で、おいしいものをいただき、先払い分を使い切り、ボトルもなくなった。
「あいつら、もう来ないな」と思われているかもしれない。

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