冬の野菜のおすそ分けは難しい。
夏はともかく簡単だ。
ナスでもトマトでもピーマンでもゴーヤでも、その日できたものを収穫して、
「みんなで分けて~」と言って分配上手な代表者に渡しておけばいいのだ。
するとその人が、争いの起こらないようにいい感じにしてくれる。
冬の野菜は理屈が違う。
サトイモでもダイコンでも、できるときは一斉にできる。
ともかく畑がサトイモだらけ、ダイコンだらけになる。
それが長く畑にいてくれるのだ。
それを夏野菜のようにホイホイおすそ分けしてしまってはいけない。
彼らは何も手を出さなければ、2月の末ごろまで畑でおとなしくいてくれる。
ただし、新しくできては来ないから、できたものを自分で管理しなくてはならない。
あるだけ誰かにあげてしまったら、この冬は飢えて過ごさなければならない。
つまり、毎日30円のお小遣いか、月900円のお小遣いかの違いと同じなのだ。
先日、我が家のサトイモをいつもの居酒屋に持って行ってワイワイやった話を書いた。
このおすそ分けは大変喜んでもらえた。
で、それを同じように会社の人に持って行ったら、
同じように喜んでもらえるかどうかはわからない。
なにしろサトイモはダイコンのように万人受けする野菜ではないのだ。
ともかく皮を剥くのはめんどくさく、そのあとゴミがたくさんできる。
お肌の具合によっては痒くなったりするので、奥様方にも不評なことが多い。
そんな苦労をしたとしても、子供の評判は良くない。
実際、私も子供のころ、夕飯のおかずがサトイモだと聞いたら、
校舎のガラスをたたき割り、盗んだバイクで焼肉屋に行きたいと思ったことだろう。
そんなことを思っていたので、会社にはサトイモを持って行かずにいた。
なにしろみんなに持っていこうと思ったら5家族分だ。
それで喜んでもらえないのだとしたら、無駄消費という以外にない。
そんなことを悶々と考えていた私に、小柄子ちゃんがこう話しかけてきた。
「こみさん、あの…たしか…『キヌカツギ』とかいうの…」
「やる」
小柄子ちゃんには以前おすそ分けをして好評だったことがあるのだ。
まさに小柄子ちゃんが言おうとしていたのもそのことだった。
私があげたキヌカツギを食べた小学生の娘さんがサトイモ好きになり、
『キヌカツギ』という単語を今でも覚えているのだそうだ。
なんと見どころのある小学生なのだ。
あのうまさがわかるなんて、若くしていぶし銀の通ではないか。
あげるあげる。
私もそういう人に食べてもらいたいのだ。
日曜に掘ったばかりの新鮮なやつを月曜にどっさり持って来てやろうではないか。
な時に限って日曜は雨の予報。

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