8月末日、会社とみそか寄席の間に実家に行った。
母のスリッパはタンスの部屋の前にあった。
戸の隙間から中を覗くと、母が倒れ……いや、枕をしているから寝ているようだ。
部屋に入って声をかけると、
「今ちょうど横になったとこ」
椅子カバーを並べてクッションを枕にしているところを見ると、
腰を据えて寝ようとしたらしい。
気分が悪いということは一切なく、膝が痛いから休んでいると言う。
だったら休んでいてもらって、その間にやることをやっておこう。
電子レンジの中にはチンするごはんが三つ。
新しい1膳分と食べかけの1膳分と新しい半膳分だ。
1膳分だと残すので、半膳分を買うようにしたのだが、ずいぶんまとめてやったものだ。
ジャーで保温中のごはんも少しあったので、新しい1膳はそこに入れて、
食べかけと半膳を夕飯にすることにした。
前回持ってきたナスとピーマンを残っていた手羽中と煮てやろう。
前回の残りの唐揚げとウィンナーをつまみながら野菜を切る。
麺つゆで煮汁を作って材料を入れてコンロにかけた。
さて、そろそろ母を起こしに行こう。
調理中も気が付いていたのだが、母は何度か起き上がったり寝たりを繰り返していた。
膝が痛くて立てないのでこのまま寝かしておいてほしいという。
以前もこたつの部屋で横になって起きられなかったことがあった。
このままで私が帰ってしまったらどうするつもりか。
私は母をお姫様抱っこ風に抱えて低い椅子に座らせた。
ちょっと痛がったが、何とかこれで洗濯ものをたたむ時の姿勢だ。
この体勢になったら自力で立ち上がり、杖を頼りに歩いて食卓まで来た。
椅子やベッドのように足を下ろせる状態だと立てるのだが、
平坦なところに寝転がると起き上がれないようだ。
湯呑に半分ほどポカリスウェットを注いでやる。
普段なら「冷たすぎる」と言ってなかなか飲まないのだが、この日はすぐ飲んでしまった。
そのあともお茶を何度もおかわりする。
「喉乾いとったんか」
「喉乾いとった」
どうやら「今横になったとこ」はウソらしい。
それなら先に水分だけ摂らせればよかった。
ごはんと、手羽ナスピーマン煮を食卓に出して夕食。
うまいうまいと、丼いっぱいの煮物を食べてしまった。
ヒザ以外は健康というのは本当のようだ。
この後玄関まで来て段を降りて鍵をかけたし、いつもの窓から見送ってくれた。
どうやら膝も大丈夫そうだ。
休みたいときは、ベッドか寝椅子にしなさい。

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