珍しくちづるが買ったミステリーは、北森鴻の『香菜里屋シリーズ』という短編集だ。
なんでもラジオで紹介されているのを聞いて興味を持ったらしい。
作者は亡くなっているのだが、新装版ということで4巻まで出ている。
せっかくなので私も読もう。
短編集は会社の昼休みに読むのにとても具合がいい。
最近では昼食後に車で1編読んで、そのまま昼寝に入るのがルーティンだ。
助手席に座って、ドアとリアドアを開けっぱなすと風が通って気持ちがいい。
まさに至福のひと時だ。
先週の木曜に2巻を読み終えた。
さて3貫、と思ったら、まだちづるが読んでいる最中だというではないか。
ちづるが読み終わったら続きを読むのだから、間にほかの小説を挟みたくない。
しかもこの週に出勤するのはあと一日だけだ。
こんな時はどこでも止めることができるエッセイ集が具合がいい。
買い置きやいただいた本の中にエッセイがないか探してみた。
ほとんどがドミステリーか冒険小説かハードボイルドだ。
その中に一冊だけエッセイがあった。
みそか寄席に一緒に行く友人Fは、通勤の渋滞が嫌で1時間も早く出勤し読書している。
それで溜った本をときどきくれるのだ。
その唯一のエッセイは、みうらじゅんの『人生エロエロ』だった。
『ゆるキャラ』や『マイブーム』という言葉を世に定着させた愉快な人だ。
毎回「人生の3分の2はエロいことを考えていた」で始まる連載の書籍化されたものだ。
読み始めたらやっぱり面白い。
翌日土曜日は母の通院日だ。
ただし、薬だけの日なので、毎日つけている血圧ノートを持っていけば本人は行かなくていい。
むしろ私一人で行った方が物事がテキパキ進む。
待合室で本でも読んでいれば……
しまった、普通に読みかけということで『人生エロエロ』を持ってきてしまった。
ブックカバーはない。
本を定位置に構えると、タイトルが受付から丸見えだ。
しかも時間をずらしていったので、待合室には人が少なく、受付に近いところに座ってしまった。
では、表紙や背が見えないように本を倒して読むか。
しかしこのみうらじゅん、イラストレーターもやっているので、中身も見せられない。
結局、病院でも薬局でも、スマホをいじったりテレビを見て過ごしてしまった。
日曜日、ちづるが例の本の4巻を買いたいというので本屋に行った。
そこで私は「間にほかの本を挟みたくない」と言ったにもかかわらず、
森見登美彦の『ペンギンハイウェイ』を買ってしまった。
そして、月曜日から読み始めてしまったのだ。
『人生エロエロ』は今、会社の私の本棚に立ててある。
機械の裏の筋トレスペースの片隅だから、めったに人は来ない。
おそらく今の感じだと『ペンギンハイウェイ』から『香菜里屋シリーズ3巻』と進むだろう。
『人生エロエロ』はそのあとだ。
それまで女子に見つかりませんように。

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