平日なら、朝ドラのオープンニング曲で仮眠から目覚め、
ドラマを観ながら準備をして、終わったら出勤する。
土曜日は一週間の総集編だ。
仕事は休みだったが、いつもの時間に家を出た。
実家に手すりを取り付けに来てくれるのだ。
実家に着いたのが9時15分前。
それから母に血圧を測らせるヒマもなく業者さんが来てくれた。
業者さんといってもちづるの勤める会社のベテランさんだ。
来るとすぐ手際よく、ほんの1時間ほどで母の部屋からトイレまでの同線に2ヵ所と、
トイレの中に一つ、手すりを付けてくれた。
「これはいい。うれしい。きれい。丈夫。すべすべ。楽」
と母は大喜びだ。
しかし、手すりを付ける話をしたときは「そんなのいらんよ」と言っていたのだ。
そのことを業者さんに言うと、母をたしなめてくれた。
「年寄りはまず『もったいない』次に『まだ自分でできる』って言う。
できやんようになってからでは遅いんや
あったら使うやろ。使うんやったら早いうちから使った方が得や。
家族が付けたろって言うたら、素直に付けてもらえ」
まさに名言だ。
母も「ほんとやねえ」とうなずいている。
時間が早かったので、親父の部屋を少し片づけてから買い物に出かけた。
寿司は4貫しか食べられない母が8貫の助六を買ったから、私は小ぶりの寿司を選んだ。
母がなぜか焼いちゃった豚肉と残りごはんを食べなくてはいけない。
なぜか焼いちゃったアジの干物は夕食に食べてもらおう。
しかし、なぜか切っちゃったカステラはちょっと減らしておかねばなるまい。
食後、親父が食卓で使っていたワゴンを片付ける。
ゴミ袋に余裕があったので、カラオケのカセットテープを入るだけ詰め込む。
口を縛って玄関に置き、母に次のゴミの日に出すように指示をする。
2時、お腹は減っていないが、カステラを減らして帰るとしよう。
残ったカステラにラップをかけ、冷蔵庫にしまったら誰か来た。
弟の奥さんと娘、つまり母にとっては孫、私にとっては姪っ子だ。
姪っ子が「学校が早く終ったからおばあちゃんのとこに行く」と言ってくれたのだそうだ。
なんとありがたいことだろう。
ただ、これで私も帰れなくなった。
まずは手すりの品評会、そしてその後カステラを食べながら母の田舎の話を聞く。
同じ話を繰り返すので、ときどき質問をしたりして話題をずらしていく。
ずらしてずらしてずらして話が元に戻ってきたら4時前になっていた。
2人を帰し、片づけをして、母にいくつか指示をして実家を後にする。
家に着いたのは5時過ぎ。
出勤か!

↑母にカツオのたたきと合鴨スモークを買ってもらったら、
ちづるがマグロの刺身と合鴨スモークを買ってきたのでクリックしてね。