今、お店はバーゲンを控えていて忙しい。
小柄子ちゃんは入荷した荷物を片づけたり、商品を補充したりで、
店と倉庫と事務所を行ったり来たり走り回っている。
そんな小柄子ちゃんを私は空調を逃がさないための巨大カーテンに囲まれた、
自分の陣地から手招きした。
「お嬢さん、とっても気持ちいいストレス解消法があるんだけど、いかが?」
「なになに~?」
かかった。
私は魔法の護摩を焚く呪術師のように小柄子ちゃんを陣地の奥に誘導する。
「これです」
これは、メモや伝票などを作るときに背に塗るボンドだ。
3キロも入っている巨大ボトルが先日やっと使い終わった。
このボトルは丈夫なので再利用している。
そのために中の残りボンドを処理しなくてはならない。
最上の方法は乾燥させてはがすことだ。
それがもうともかく気持ちいいのだ。
このネタは過去にも書いたことがある。
『ボンド』をブログ内検索してみたら、2回ヒットした。
前回が2017年1月、その前が2014年5月だった。
つまり、数年に一度しか味わうことのできない貴重な経験だ。
そのことを説明すると、小柄子ちゃんは「やりたいやりたい」と乗り気になった。
ちょうど梅雨の晴れ間で二日間天日干しできたので中のボンドはカラカラだ。
入口辺りの“ダマ”をつまんで引っ張るのが始めやすい。
そこからボトルを回しながら内側へ内側へとはがしていく。
なんだか気合が入っちゃった小柄子ちゃんは、
「よし、途中で破らずに最後まではがすぞ」
と自分にルールを課して没頭し始めた。
側面は薄いからはがしやすいが破れやすい。
使い切ったつもりのボンドも、重力で下がるのでそこには厚く溜まっている。
側面をはがしおわったあとのコーナー部は、けっこうな力がいる。
小柄子ちゃんは細い腕で、それをグイグイひねっていく。
「あ」
取れたようだ。
彼女が取り出したのはくちゃくちゃになった薄いボンドの幕だ。
ボトルの内側は新品同様にピカピカになっている。
いや、新品の部分が充填以来、初めて外気に触れたのだ。
それにしてもわが社、ヒマなのではないか。

↑「これです」の後に貼る写真が行方不明なんだけどクリックしてね。
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