“すみれ”という名の紙がある。
和風で全体に花びら風の模様がある。
5色の中から“桃色”を選んだ。
あと4切り判の色画用紙を、赤・薄青・ひまわり・黄緑・朱の5色。
会社で紙を買うのは久しぶりだ。
約束の場所は近くのショッピングセンターのゲームコーナーの奥の休憩所。
元フードコートだったのでテーブルがあるし、従業員もいない。
周りをプリクラマシーンに囲まれているので女子高生がやたら多い。
私が一番乗りだったがすぐにMえが来た。
Mえの計画は色画用紙を切って作った文字を“すみれ”に貼って、
Aりの送別会の時に壁に貼るのだそうだ。
Mえの考えた文章は、
『Aり、7年間おつかれさまでした。ありがとう』
なのだが、これでは短いのでもっと足したいという。
Mえの言う『また遊びに来てね』とか『元気な子供を産んでね』というのは、
それぞれがメッセージに書く言葉ではないのか。
なので私は、
『Aり、おつかれさま。7年間ありがとう』
を提案した。
そこへレタリング係のMえの妹が到着。
私とMえの意見を両方聞き、私の案に決定した。
さっそく作業に取り掛かる。
どの文字をどの色にするか決め、M妹子が文字を下描きする。
それを私とMえがはさみで切り抜くのだ。
文章では私案が通ったが、全体のプロデューサーはMえだ。
細かいところは彼女が決める。
だが、どうしてAりの名前を漢字で書くことにしたのか。
画数が多いのではさみで切り抜くのがとても大変だ。
私が漢字で苦労しているというのに、ふと見るとMえはひらがなを選んで切っている。
『間』なんて字はくりぬくところが多くて大変なのだ。
そうだ、私の家の鍵には小型のアウトドアナイフが付けてある。
あれがカッターナイフのように使えないか。
試してみたら上々で、私はくりぬき係になった。
ちょっと手慣れて流れ作業がスムーズになってきたころ、坊主頭Fが来た。
坊主F「僕はなにをしたらいいの?」
M妹子「おなか減った」
彼はビールとじゃがりことピノを買いに行った。
こんな工作をしたのはいつ以来の事だろう。
およそ1時間で切り抜きが終了した。
一度“すみれ”の上に文字を並べてみる。
プロデューサーは大満足で、それを記念に撮影していた。
F「おい、ありがとうの『と』が裏返しやぞ」
貼る前でよかった。

↑あとはMえに任せたけど……クリックしてね。
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