何が腹立つって、くっつくフライパンほど腹の立つものはない。
やはり安物を買ったのは失敗だった。
たいして使ってもいないうちに、ナントカ加工はどこへやら。
玉子焼きが確実に和風スクランブルエッグにになってしまう。
ええい、こいつはもう処分だ。
替わりはないかと流し台の下を開けてみる。
中華鍋や鉄のフライパンはあったが、あえて白いのを取り出した。
見るだけで眉間にしわが寄るほど不愉快なフライパンだ。
どこの誰がホーローをフライパンの素材にできるなどと考えたのだろう。
もう一度だけ使ってみて、くっつくようならこいつも処分してやろう。
やはり焼きそばでチャレンジするんじゃなかった。
多めに油を敷いたつもりだったが、最初に肉を入れた時点で、
アロンアルファ敷いちゃったかって思うほどのくっつき度だ。
野菜を入れる前に肉はミンチになってしまった。
キャベツとピーマンを入れても肉がこびりついているから返すこともできない。
そこへ麺を入れて事態が好転するはずがない。
力技でかき混ぜても寸断、分裂、粉砕するばかりでソースもろくにまざらない。
一応完成というかあきらめて皿に盛る。
盛れたのは全体の30%ほどで、皿の上でフライパンを逆さにしても、
まるで仙台の七夕祭りのように、あらゆるものが垂れ下がるだけだ。
針金を噛むような気持ちで焼きそばを食べながら、私はプラスに考えた。
くっつくようなフライパンはすべて捨ててしまえばいい。
それよりさっき流し台の下で見つけたものを使いたい。
もう20年以上昔に買って、一度だけ使ったあの『ダッヂオーブン』だ。
当時キャンプ好きだった私は「持っていたい」という理由だけで小ぶりのを買った。
肉厚の鉄製の鍋は、使い道はあるが手入れが大変だ。
使った後はすぐに洗って焼いて油を塗りこんでおかないとすぐにさびてしまう。
だが、逆に毎日使えば油も馴染んでさびなくなるはずだ。
鶏や豚のカタマリを野菜と一緒にとろ火で焼けば中まで火が通るのではないか。
だとしたら弁当のおかずが一気にできるし、サラダの代わりに野菜を摂ることもできる。
これに納まるだけを夕食としたらヘルシーだし、洗い物もこれ一つで済む。
よし、一度試してみよう。
出して来てみたら、古い油でギトギトだ。
お湯につけて洗ってお湯を沸かして洗って野菜くずを炒めて洗ってから焼きして油を塗る。
これできれいになったのではないだろうか。
オリーブオイルを敷き、鶏のもも肉をメインにニンジン、ジャガイモ、シイタケを並べる。
最初だけ強火で、焼ける音がし始めたらとろ火にして30分焼いてみよう。

なぜダッヂオーブンの写真じゃないかというと、鶏肉に火が通ったかどうか確かめたからだ。
半分に切ってみても、中に赤いところは無く、なんだか柔らかく焼けている。
裏返したり混ぜたりしないから焦げたところもあるが、そこはご愛敬。
塩コショウ以外の味付けをしなかったにもかかわらず、なにも付けなくても食べられる。
むしろ素材の味を強く感じることができてありがたいぐらいだ。
よし、朝もこれをセッティングしてから更新にかかれば弁当作りが簡単だぞ。
とおもっていたのだが、どうやらちづるが味ごはんを炊いたらしい。
御馳走はおあずけになるものだ。

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