気が付いたら三日にもわたりはるちゃんに失礼なことを言い続けてしまった。
本来「わるだくみ」なんて単語を使ってはいけないのだ。
はるちゃんを派遣してきた会社はちゃんとした企業で、
決して『ショッカー』や『卍党』ではない。
だから今日ははるちゃんを褒めとこう。
はるちゃんは、陽気で健康で若くてかわいい女の子だ。
仕事柄か、しゃべるのが上手で人当たりもいい。
しかしその能力を一番感じるのは頭の良さだ。
特に記憶力はバツグンだ。
はるちゃんの電気椅子コーナーには、機械が7台ある。
その後ろには待つための椅子が並んでいて、はるちゃんがうまくさばいて座らせてくれる。
はじめてきた人はカードを作ってもらう。
名前と気になる症状を書き、次から来た日にハンコを押してもらう。
コーナーの前にはカラーボックスが二つあり、健康に関する本がびっしり詰まっている。
例えば初めて来た人が「首が痛い」と言ったら、
サッとカラーボックスに行き、まるで見てないかのように本を取ると、
ササッと関連の記事や写真のページを開いて見せてくれる。
本の位置を覚えているとしか思えない。
そしてカードに書きこんだことをものの見事に覚えている。
二回目の人でもその近くを通ったら、
「○○さーん、今日はいかがですか」と声をかける。
話せるチャンスがあったら「膝の調子はどうですか」と症状を気遣う。
顏と名前と症状が、すべて頭にインプットされているのだ。
さて、こんなに頭の良いはるちゃんだが、さすがに手を焼くのは方言だ。
先日、手が荒れるという女の子がやってきた。
仕事で毎日3升のお米を研いでいるのだそうだ。
この「お米を研ぐ」ことを、こちらでは「米をかす」と言う。
だからこの女の子が、
「毎日、米を3升かしとるもんで」
と言うのがはるちゃんには理解できない感じだった。
しかも女の子は「米をかす」が標準語だと思い込んでいる。
なので私が、そのことを説明してあげた。
「へえ~『米を研ぐ』ことを『かす』って言うんですか~」
とはるちゃんはビックリ顔だ。
で、その女の子は、
「うん、さんしょうかすの」
お酒なら一升瓶で3本の“3升”と言う意味だ。
これがはるちゃんには通じていない。
「山椒も研ぐんですか?」
「3升かすの」が「山椒をかすの」と聞こえているらしい。
だから私が、指を三本立てて「1升2升3升の“3じょう”な」と教えてあげた。
3人で大笑いして、はるちゃんはそれを「メモしておこう」と書いていた。
さあ、果たしてその知識が役に立つことがあるだろうか。

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