火曜日は居酒屋に行く日だ。
鼻息荒く夕方の仕事をこなしていると、Aりから電話がかかってきた。
こんな時間に、いや、LINEでなく電話が来ること自体珍しい。
「昨日が女将さんの誕生日やって覚えとった?」
そうであった。
確か二月の終わりごろ、昔居たバイトの女の子と一日違いで、
常連たちは二人まとめて祝ったものだ。
その子が居なくなると、女将さんはAりやMえのように、
来月よ来週よ明日よ今日よカウントダウンよ~と騒がないのでわからなくなってしまった。
「こみ、どうするの?」
「じゃあワシはララパークで何か買ってくわ」
「いいな~ララパ行けて、Aりはそんな時間無い~」
彼女はとりあえずケーキがあるらしいのでそれをプレゼント替わりにするらしい。
本当は私に何か買って来てほしいらしいのだが、私のセンスは信用できない。
私も文句を言われてもつまらないので、「ケーキあるならいいじゃん」と慰めた。
ただ、それがバースディには見た目が地味なチーズケーキなのだ。
仕事終わりで私は近くのショッピングセンター『ララパーク』へ行った。
電話の後、頭をフル回転させてプレゼントを考えていた。
『ヴィレッジバンガード』は最近行ったばかりだから覚えている。
女将さんにふさわしい落ち着いたものはないのだ。
本屋さんに行ってみた。
最近の女性向雑誌や健康雑誌には驚くような付録が付いていることがある。
ちょっとギャグにもなって面白いのではないか。
女性誌売り場を遠目に見ていると、女将さんにちょうどいいものがあった。
ゴワゴワの髪でもサラサラになるという、魔法のブラシだ。
なにしろ女将さんは髪が多くてゴワゴワなのだ。
しかし、あの売り場に行ってブラシ雑誌を手に取り、レジに持って行く勇気がない。
結局、恥ずかしいがファンシーなお店に行くことにした。
やっぱりこのお風呂セットがいいかなと、決まりかけた時、
その後ろの方にある落花生型の物体を発見した。
オシャレでいい香りの、腰や肩に当てると気持ちいいこりほぐしグッズだ。
どちらも同じぐらいの値段なので迷う。
そうだ、両方買おう。
で、Aりにお風呂セットを見せて、それでいいというなら譲ればいいのだ。
もしセンスが気にいらなかったり予算が合わなかったら、
私が今度誰かの誕生日プレゼント用に置いておけばいいのだ。
幸い中身を見せるラッピングというのがあるというので、両方購入した。
店に着くまで他の常連に会わないよう、普段通らない道を遠回りして歩いた。
駐車場にはすでにAりの車があったので、電話で呼び出す。
「GOOD!」
私のセンスに問題はなく、Aりはプレゼントを引き受けてくれた。
時間をずらして店に入り、何もなかったかのようにハッピーバースディ。
重要な情報をくれたAりにお返しもできたし、お祝いもできた。
そのうえ、Aりとコソコソした感じになってちょっとウキウキだったのだ。

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