あるご婦人の話をしよう。
この方は私の知り合いの知り合いで、よくそのエピソードを聞く人だ。
この人が、お昼休みに食事に出た。
一度行ってみたいと思っていた店があったのだ。
しかし、残念なことにその店はお休みだった。
仕方なく徒歩で会社に戻る途中、ある食堂が目についた。
そこにあることは知っていたが、営業しているのかどうかわからないような店だった。
瓦屋根の普通の民家風の一軒家で、玄関前の駐車スペースは舗装もしていない。
いわゆる昔からの大衆食堂だ。
そこに車がいっぱい停まっていた。
私も何度か行ったことがあるが、安くて量が多くておいしい人気店だ。
ショーケースのおかずを取ってごはんと味噌汁を頼むもよし、
かつ丼やラーメン、カレーなどのメニューもある。
外仕事の人たちや営業マンなどでお昼は大賑わいだ。
ただ、この人はお昼時に通ったことがなかったので、
とてもさびれたお店のようなイメージを持っていたのだ。
「いったいどんなお店なのだろう」
そう思ったこの人は、ちょっと店内を覗いてみた。
するとすぐに「いらっしゃい」と声をかけられ、
入らなければならないような状況になってしまった。
どちらにせよ、どこかで昼食は食べなければならない。
そこでこの人は店に入った。
おそらく、女性が一人というのはこの店では珍しいお客さんだっただろう。
注目されたのではないかと想像できる。
とりあえず、何かを注文してこの人も食事を始めた。
食べ始めてすぐ「おいしい!」と思ったそうだ。
こういうタイプの店で生き残っているということは、もちろんおいしいのだ。
つぶれかけていると思っていたお店がこんなにも繁盛していて、
こんなにもおいしいものを出している。
そう考えたらなんだか泣けてきたのだそうだ。
そしてぽろぽろ涙をこぼしながらお昼ご飯を食べていた。
周りの人からしたらびっくりだ。
珍しい女性の一人客が入ってきて、食べながら泣き始めたのだ。
それを見ていたおっさんの一人が声をかけた。
「ねえちゃん、いくら負けたんや」
そう、この店パチンコ屋の近くにあるのだ。
泣きながら食べるというしゃべりにくい状況で、違う違うと身振りで示すが、
いっぱい慰められて帰ってきたのだそうだ。
めでたしめでたし。

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