私の職場があまりに寒いので、囲いを作ってエアコンを入れてくれることになった。
いや、ずっと前からなっていた。
建設屋さんがなかなか見積もりに来てくれなかったのだ。
おいおい、あったかいから平気やったけど、寒くなってきたやないか。
と思い始めたころ、営業の人が話を聞きに来、
これで動き始めるのかと思いきや、そこの社長がサイズを計りに来、
いよいよ工事が始まるかと思いきや、下請けの人を連れてきた。
どういう手順でやるか、ってなことを話し合って、大体が決まったようだ。
あれだけ同じ話を何度もし、何度もサイズを計ったのだから決まるだろう。
「じゃあ、こんな感じで」
と言いながら、工事関係の人は去って行った。
私が自分の仕事を始めると、下請けの人が一人戻ってきた。
「あのー、あそこにフォークリフトがあるんですが、
工事の時に使わせてもらってもいいですか」
「はいはい、どうぞどうぞ」
「使い始めたら時間がかかると思うんですけどいいですか」
「はいはい、いいですよ」
うちにはフォークリフトがあるが、そんなに頻繁に使わない。
おもに私がヒマなとき、楽に仕事をしている風に見せるために乗っている。
工事に使ってもらえるならフォークリフトも本望だろう。
「ありがとうございます。じゃあお願いします」
と言って、その業者さんは向こうに行った。
その時、一緒に来ていたもう一人にこう言ったのが聞こえた。
「やさしい」
たしかに私は出入りの業者さんには親切にするように心掛けている。
いやな空気で仕事をしたくないからだ。
しかし、この「やさしい」は私のことを「やさしい人だ」と言ったのではないと思う。
建築関係の業者さんはあちこちの現場に行く。
いろんな会社に行き、いろんな人と接して仕事をしている。
もちろんやりやすいところもあれば、いやなところもあるだろう。
今日行く現場はどんなところだろうなあ、と思いつつ行くに違いない。
で、わが社は「やさしい」ところと「そうでないところ」があるなら、
「やさしい」に分類される現場だ、ということなのだ。
実際、私も配達で外に出ていた時は、ホントにいやなところもあった。
今も配達グループは不愉快な目に遭わされているらしい。
やさしいかどうかはともかく、仕事は何事もスムーズにいくのが一番だ。
使えるものは使ってもらって、早く作業を終わらせてもらった方がこちらも楽だ。
作業が終わってお互いが「ありがとう」と言えれば気分がいいではないか。
と、思ってはいるのだが、その後作業に来る気配はなく、
この計画が年を越すことはもう間違いない。
私だってそういつまでもやさしい顔ではいられない。
節分までには来ないと、鬼にならないとも限らないのだ。

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