あちこちのレストランで、料理の材料について“ウソ”が横行している。
残念なことに、わが伊勢志摩でもそんな“ウソ”が発覚した。
メニューに「車エビ」とあるのに、実際はバナメイエビやブラックタイガーを使用していたらしい。
店側は、これを偽装ではなく誤表示だとしている。
車エビを知らない人間がメニューを作ったとでも言うつもりなのだろうか。
もしそうなら「エビの○○」ってするだろう。
発注はどうなっていたのだ。
料理人はどうだったのだ。
“誤表示”とはこういうことではない。
「うっかり書き間違えちゃったよ」ということだ。
つまりこの発表をしたやつは、正しい誤表示の仕方を知らない。
試しに『バナメイエビ』を誤表示してみよう。
☆薔薇名エビ、バター炒めエビ、バナメイヘビ、バーナビー、花めいたエビ、バナメイセエビ、
ついでだから『ブラックタイガー』もやってみよう。
☆ブラックライダー、ムラっとくるタイガー、黒鯛、ダイヤブロック、ピンクパンサー
こういうの好きだから車エビもやっておこう。
☆東エビ、轟エビ、車工匕、車海考、車悔老、毛沼エビ、クールな燕尾服、来る真由美、
これで誤表示と偽装の違いがわかっていただけただろうか。
ただし、一番の間違いは表示の問題ではない。
もっともっと根本のところにある。
そこで私の自慢話を聞いていただきたい。
ウチの両親は山奥の出身で、今でもそちらには親戚がたくさんいる。
あるおじさんが、季節になるとキノコを採ってきてくれる。
時にはマツタケやシメジがあって、キノコのせいではないが笑いが止まらないときもある。
これは炙って醤油、これはバター炒め、などとはじめのうちは考えているのだが、
日持ちはしないし、汚れを落とすために洗わなければならないのもある。
そこで、全部鍋にぶち込んでキノコ汁にしたことがあった。
シイタケやエノキなども買ってきてキノコオンパレードをめざした。
キノコには牛肉が合うと聞いたのを思い出して、慣れない牛肉も奮発した。
この汁がともかくうまかった。
ちづると、今まで食べたうまかったものの話をすると必ず出てくる我が家の名作だ。
翌日は残った汁をそばにかけて食べた。
これは人生で体験したそばでベストスリーに入るだろう。
これは、いろいろなキノコと牛肉の組み合わせの勝利だ。
いわばチームプレーと言えるだろう。
この食材とこの食材をこういう方法でまとめる、これが料理なのではないか。
だとしたら、バナメイエビだろうがブラックタイガーだろうが、
それに合ったパートナーと料理法をチョイスして、おいしく仕上げるのが料理人の仕事だ。
「車エビだからおいしいですよ」なんてのは、エビの手柄の横取りだ。
それを心に留め置かないで、どうしてレストランが営業できるのか。
では、最後にキノコ汁で。
ピノコ汁、火の粉散る、昨日のちづる、広小路ビル・・・

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