ウチの親父だけでなく、最近私の周りで怪我や病気で病院通いする人が多い。
怪我をしやすい季節、病気の旬、なんてものがあるとは思わないが、
何かひとつ起こると、いくつも重なったりするものだ。
そんな話を聞いていて思うのが、医療の進歩というやつだ。
手術の傷口も縫ったりせず、ホッチキスで止めてその上から透明テープで貼るのだそうだ。
もはや手術というより梱包だ。
でもそれが、体に優しくて術後の治りが早いならありがたい。
手術自体も大きくお腹を開けたりせず、小さい穴からロボットアームみたいなのを入れてやるらしい。
想像するとゾッとするようなことだが、これも体への負担が少ないのだ。
そして麻酔は手術が終わったらすぐに覚める。
薬の効き目も人それぞれだろうに、よくぞ的確に投与できるものだ。
便利なものが現れると、その分古いものが無くなっていく。
それは病院だけでなく、各家庭の薬箱でも同じことだ。
私が子供の頃の定番だった赤チンはほぼ見なくなった。
虫歯の応急処置用の『今治水』や膿を吸い出す『たこのすいだし』はあるのだろうか。
私が思うに、包帯というものを見なくなった気がする。
バンドエイドなどの絆創膏が発達、多様化して、包帯の出番がなくなったようだ。
昔は、怪我をするとオキシドールで消毒してガーゼを当てて包帯で巻いた。
今、包帯を使うのは病院だけではないだろうか。
包帯をしている人を見て、自宅で処置したとは考えられない。
自宅の絆創膏で対処しきれない傷なら病院に行ってしまうはずだ。
包帯は家庭の薬箱から消えた。
病院の包帯も昔とは違っている。
なんだかゴムっぽい感じで、少し引っ張りながら巻くと、それ自体でくっついている。
ちょっとサランラップみたいな感じだ。
だから、使う量も短くて済む。
昔は「包帯留め」というものがあった。
トゲトゲのついた金属を短いゴムひもでつないだものだ。
この説明で形を想像できた人は偉い。
そのトゲトゲを包帯の末端にひっかけ、ちょっと引っ張って巻いてある部分に留める。
ああ、説明しにくい。
それでも包帯留めは当時の便利グッズだった。
そもそも包帯というものはただの白く長い布で、
幹部にガーゼを当ててその上から巻いていき、最後まで巻いたら先端を二股に裂いて縛ったのだ。
これが結構技術がいった。
裂く長さが少ないとちゃんと縛れないし、裂きすぎると巻く部分が少なくなる。
もちろん、洗って何度も使うので、薬箱の中にはくるくる巻いて裂いた部分で縛った包帯のダマがいくつかあった。
だいたいその巻の大きさで長さが分かり、傷の場所によって大きいダマか小さいダマか選んだものだ。
でも、案外包帯を巻かれるのは嬉しくて、なるべく長いのを選んでいた。
指の傷で手首まで巻かれたりすると、なんか一人前になったような気がしたものだ。
ただ、あとちょっとで結べるのに、って時はちょっと無理をして、
縛り目で血が止まってたりすることもあった。
そのうちに包帯をすっかり覚えてしまって、
これは血が付いてるからいやだとか、これは裂けすぎてしまってもう使えないとか、把握していたものだ。
というか、そんなにしょっちゅう怪我していたのかなあ。

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