私が今はいている靴は、もうすっかりオンボロボロンで、
小指のところは出っ張ってもはや穴が開こうとしているし、
かかとは何度も踏んだからか、凸凹していてフィット感がない。
クッションも磨り減ってしまったし、ヒモはすぐほどけるし、
ああもういや、な靴になっていたのだ。
そして私は徒歩通勤を始めたので、ウォーキング用の靴を欲していた。
おそらくあんなに足が疲れるのは靴のせいだ。
ちゃんとした靴で歩きたい。
でも、ちゃんとした○○用の靴は高価だ。
そんな靴で仕事をしてはもったいない。
ふとテレビを見たら、安い靴を売ってますよという宣伝をやっていた。
某スポーツ店が自社製品を生産し始めたらしい。
これしかない、と思った私たちはとなりのとなりの市まで出かけることにした。
店に入るといきなりその靴の売り場だった。
これは売れ線、主力商品だという印だ。
棚一面が1980円で、なんだか種類もたくさんある。
早速「はいてみろ」とちづるが言う。
実は私は試し履きが大嫌いだ。
靴なんか足の周りになんとなく存在すればいい、ぐらいの考えだ。
だからよほどの場合でない限り履いてみることはない。
でも今回は履いてみることにした。
試してみないと買わない、とちづるに言われたのだ。
それに安物だし、こんなにたくさんあるならいいか。
とりあえず、スポーツシューズの棚から26.5を選んで履いてみる。
ぴったりだ。
決まった、これでいい。
ところが、その隣の棚が『ランニングシューズ』となっていた。
『スポーツ』よりは『ランニング』の方が『ウォーキング』に近い気がする。
いや、近いというより具体的だ。
『ランニング』や『ウォーキング』が『点心』や『飲茶』なら、
『スポーツ』は『中華』という大きなくくりになるだろう。
こういう考え方ばかりしているので痩せないのだ。
例えがいつも高カロリーだ。
そのランニングシューズは、スポーツシューズよりも派手だ。
しかも箱に入っている。
なのにお値段はおなじ1980円だ。
だったらこちらを選ぶだろう。
ただ、展示品が私の足とはサイズが違っていた。
すると、悪逆非道なちづるは、箱に入っている靴を出してきた。
なんてことをするのだ、これは売り物だぞ。
薄紙を開いて箱から出して詰め物を抜いて床に置いて、
「履いて見ないとわからんではないか」と言う。
これがもし、シュークリームだったら許されるか?
展示品と別の、箱に収まっている商品をお試しするなんて。
遠くから店員さんが我々のことを『困ったちゃん』だと見てないか。
おどおどしながら試し履きをする。
ジャストフィットだ。
これしかない。
ほら店員さん、これは買い取るんですよ。
こうして私は史上初、
赤と黒で構成されている靴を履くことになったのだ。

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