二月の終わりごろ、居酒屋の女将さんとアルバイトの女の子の誕生日に、
私があげたプレゼントはローソク。
女将さんには生ビールの形をしたやつ、
バイトの子にはクッキー型のやつ。
どちらも良い匂いのする、通称アロマキャンドルだ。
先日、もう一人のバイトの子の誕生日にあげたのもアロマキャンドル。
こちらは形はふつうで、入れ物がかっこいい。
ブリキのような材質で、灯りを灯すと隙間から洩れた光が美しい模様になる。
別に私はローソクマニアではない。
あ、いま新たなる誤解を生んだかもしれないが、
溶けたロウを垂らされて喜んだりもしない。
だけどローソクを選んだのにはいろいろと理由がある。
実は、三重県はローソクの生産が日本一だ、と思う。
カメヤマローソクというトップメーカーがあるのだ。
二月に買ったローソクは高速道路のサービスエリアにある、
このメーカーの直営店で買った。
伊勢神宮近くのおかげ横丁にも同じような店がある。
年越しの際には毎年その店も覗きに行く。
本当のローソクは二本が一セットで、
芯がつながったままヌンチャクみたいな格好で売っていることをご存じだろうか。
いや、それが本当なのかどうかは知らないが、そういうのも売っている。
四月にプレゼントを買ったのは、専門店でなく、
よく行くファンシーなお店だった。
私はスプーンを品定めしに行くので、けっこうファンシーなお店を知っているのだ。
ただ、そういうお店にローソクがあるのもカメヤマローソクの影響だと思っている。
この三重県名物のローソクが、おっさんが若い娘に送るには具合がいい。
まず、値段が安い。
送った三つとも千円以内だ。
私にもありがたいが、あまり高価なものを送って下心があるように思われても困る。
その値段がわかりにくいのも魅力だ。
私ほどのベテランならともかく、一般人にローソクの定価は浸透していないだろう。
誰かに送るモノは、いくらかわからないが高価な可能性もある、ぐらいがいい。
そして一番いいところは、使うと無くなってしまうことだ。
ぬいぐるみのようにいつまでも残るものをあげると、あちらで困る場合がある。
もらった側の趣味に合わないこともあるだろうし、
おっさんの寄越したものを他のものと並べたくないかもしれない。
ジャマ扱いされるのは悲しいし、だからといって捨てられたらもっと悲しい。
そして、実際がどうなっているのかわからないのに、こんな想像をしてしまうのが悲しい。
とはいえ、食べ物を送るのはつまらない。
仮に「あのおじさまからの贈り物うれしい」と思ってもらえたとしても、
食べ物を飾っておく訳にはいかない。
そして食べたら無くなってしまう。
残しておきたいと思ってもらえたとしても、残しておくことができないのだ。
ローソクなら「おじさまからの贈り物」と思ってもらえたらいつまでも飾っておける。
また「あのオヤジがよこしくさった」と思われていたとしても、
灯せばやがてなくなるし、アロマの効果で落ち着いてもらえるだろう。
今日はローソクのプレゼントとしての魅力、
よりも、短くなったローソクのような、おっさんの悲哀をお届けしました。

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