内容証明で区長さんに手紙を出した翌日の夜、
区長さんから電話があった。
この区長さん、ウチが班長だった年の会計さんだ。
なので顔は知っている。
おとなしくてまじめなとてもいい人だ。
この区長さんが、なんと私の意見に賛成してくれた。
伝統として長く続いてきた大念仏行事をなくせとまでは言えないが、
今のまま、区の負担で続けることには抵抗があるらしい。
区長さん以外の今年度の三役、会計と書記の人もいわゆるよそ者で、
区の行事にそんなに愛着はないのだ。
区長さんに自分の気持ちを伝えたら、
議題の一つとして取り上げてくれることになった。
あとは私が好きなように発言したらいいと。
ただ、けんか腰になることだけは避けてくれといわれた。
もちろん紳士の私のあだ名はシンシア。
冷静に発言させていただこう。
で、本番の初総会。
ベキバキに緊張して公民館に向かった。
新三役の挨拶のあと、議長が選出される。
お約束どおり、いつもの人が選ばれる。
この人が、人柄はとてもいいのだが、生粋の地元至上主義者。
大総会で戦った相手だ。
議事が進行しいよいよ出番。
区長が私の提案を発表し、お膳立てはしてくれた。
議長が自分の意見を言ったあと、意見を求め、
私は挙手して発案者であると宣言し、戦闘開始となった。
さて、討論というものはどちらにも理があるものだ。
でも、私は私なので当然私の味方だ。
だからこの内容は私の主観で書かせてもらう。
敵の論理はいきなり無茶だ。
お盆に行う「大念仏」という供養の行事を、宗教ではないという。
伝統の継承だとか文化的行事だと解釈しろと言う。
そんな根拠で貧乏な区の予算の大半を使われてたまるか!
祭りと言うものは多かれ少なかれ宗教色を帯びているもので、
有名な高山祭りや平安祭りでも寺や神社が関わっているという。
じゃあそういう祭りが自治体の予算を湯水のごとく使い、
全住民に参加を強制しているのか!
私は、檀家以外にメリットのない大念仏行事の運営を区から切り離し、
その予算を4時間もかかっているドブ掃除に使えと言っているのだ。
ほぼ、議長と一対一の戦いだったところに、区の古株どもが参戦してきた。
おかげで討論はばらばらだ。
ワシが若いころは11人でカンコを踊っただとか、
百姓だけで用水の掃除はできんとか、
前に大念仏をやめようとしたら疫病が流行っただとか、
江戸時代か!
最後に、
「この区は全員参加で仲良くドブ掃除をするすばらしい区」
なんていわれたので、血が上ってしまった。
私たちの班は、引っ越してきたとき、新しいからという理由で掃除範囲からはずされ、
一番辛い所にまわされて、そこが終わったら何の指示もなく2時間も待たされ、
挙句に『何もせずに座っとるんやったら草むしりでもしろ』といやみを言われたのだ。
なので、それを説明し、
「そんなやつらと誰が仲良くできるんじゃー!」
と、ほえてしまった。
紳士的に。
それでほぼ時間切れ。
結局なんにも変わらなかった。
総会終了後、区長さんにお礼を言われ、書記さんには慰められ、
大勢の区民には嫌われたようだ。
ただ「草むしりしろ」と言った人が来て、
そんなことを言ったかもしれん、とあやまってもらった。
さらに
「これから親しく付き合いをしようやないか」
と言われ、ケータイの番号を渡された。
まっぴらだ。

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