車の窓の外側を拭く。
これでワイパーを使わなくても、雨粒は風圧で飛んでいってしまうはずだ。
でも、そうはならない。
まったく雨は水滴にならず、むしろ拭いた部分が汚れたような気がする。
車の窓の内側を拭く。
これで油膜や汚れは取れ、湿気があっても曇らなくなるはずだ。
でも、そうはならない。
拭いた部分だけが、曇りよりもしつこい膜になって視界を妨げる。
どちらも、ウェットタイプのペーパータオル。
百円均一で買った商品だ。
「百均のじゃダメだ」
ちづるの説によると、百均のこういう商品は、
普通の水に、なんらかの添加物を入れてあるだけなのだそうな。
その「なんらか」はタダの「なんらか」であって、
決してなんらかの効果の「なんらか」ではないらしい。
簡単に言えば、
「匂いがつけてあるだけ」
なのだそうな。
思えば、子供のころにもそういう商品があった。
昆虫採集セットだ。
今思えばとんでもない話だが、
子供用のおもちゃだというのに、メスやら注射器やらが入っていた。
この中に薬品が二種類あった。
赤い麻酔薬と、青い「腐らない薬」だった。
この薬、明らかに水になんらかの添加がしてあるだけだ。
この場合は『色』だ。
私の記憶では『昆虫採集セット』は二回買ってもらった。
一回目は本当におもちゃで、二回目にはグレードアップして、
メスは金属、注射器は本物だった。
でも、どちらにも二種類の色水が入っていた。
このようなおもちゃはとても危険だ。
虫にとって。
子供は使いたくて仕方がない。
いっしょにセットされている虫めがねなんかどうでもいい。
注射器こそがこのセットをおねだりした目的なのだ。
子供は犠牲者を求めてさまよう。
やがて、何でもいいから捕まえる。
そのあとは修羅場だ。
子供はこう考える。
「まずは麻酔を試したい」
そして、虫に注射針を突き立てる。
虫の体の大きさから考えると、とんでもない太さの針だ。
虫でなかったら、この針だけで即死だろう。
そして薬液の注入。
子供の辞書に『少し』と言う文字はない。
注射器に入る限りの色水を注入する。
もちろん、虫の小さな体にそれだけの液体が納まるわけがない。
全身から赤い液体を噴出させ、虫は死んでしまう。
麻酔薬だが、寝ているわけではない。
子供は動かなくなった虫を標本にしたりしない。
そもそも採集ですらない。
目的はあくまでも注射なのだ。
子供は再び動き出す。
次の獲物を求めて。
こういう行動を繰り返していると、麻酔薬ばかりが減る。
青い『腐らない薬』ばかりが残ってくる。
まだ小さかった私は、この「腐らない薬」をカマキリの卵に注射した。
青い液体がじゅわじゅわあふれ、それを空き缶に入れておいた。
その薬の効果があったのかどうかは知らない。
でもそのタマゴは孵化し、洗濯機が子カマキリまみれになって怒られたのだった。

↑注射じゃなくてクリックしてね
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