全ての人は、ほとんどの事においてアマチュアだ。
気象予報士は棒高跳びは(たぶん)できないし、
ギター弾きに米作りは(たぶん)無理だし、
アナウンサーが提灯を貼るのは(たぶん)不可能だ。
人生で、プロフェッショナルとして極められる道は何本もないのだ。
ただ、ひとつの道を極めた人は『極める』ということがわかっている。
だから、自分がアマチュアである分野でも、
「ここで手を抜いてはいけない」
「無理は禁物」
「無駄なようだが重要だ」
というようなことが判断できるのだと思う。
それに引き換え、何一つ極めていないヤツに限って、
自分は何でもできると勘違いしている。
できもしない事をプロっぽくやってみせようとして赤ッ恥をかくのだ。
レーサーのつもりでスピードを出して車をぶつける。
大工のように釘を打つつもりで指先をうちわにする。
中華鍋を振り回してチャーハンをばらまく。
お笑い芸人を気取って人前に立ち、人々の背筋を凍らせる。
中でも素人が一番やってはいけないのは手品だ。
先日、テレビレポーターが、次の話題のタイトルを手品で出して見せた。
しかしそれがドヘタクソで、タネがまるわかりなのだ。
「どこからともなく」なんていえないほど、はっきり出所がわかった。
これは本職に対する業務妨害だ。
シロートがやってタネがばれたら、プロもそのネタを使えなくなるではないか。
手品なんて、道具があってやり方がわかってたらできるというものではない。
話術と手さばきで人々の注意をひきつけたりそらしたりして、
その技を最も効果的に見せる技術が必要なのだ。
もちろんシロートでも、趣味で楽しんだり余興で見せるのは構わない。
ただ、このレポーターの場合、公共の電波でネタをさらしてしまった。
しかも、本人がやりたがったとも思えない。
場の空気も寒々しかった。
要するに誰一人この手品を喜んではいなかったのだ。
あほらしい。
さて、手品と同じように、うかつに人に知られては困ることがある。
プロとかアマとかの区別はないが、非常に慎重を要することだ。
ウワサでは、メーカーも頭を悩ませているらしい。
そう、カツラだ。
メーカーがいかに研究を重ね、自然に近いカツラを作っても、
つける人が雑な付け方をしていたら丸わかりだ。
その人が「ああ、これはどこそこの」と人に話したら、
メーカーの沽券にかかわる。
でも、メーカーは顧客にあーだこーだ言えないのだ。
メーカーだけの問題ではない。
あからさまにカツラの人と対面するのは居心地が悪い。
本人が自然に振舞えば振舞うほど、こちらがぎこちなくなってしまう。
どこかに穴を掘って「わかっているぞー!」と叫びたくなる。
きのう上司Tが病院に行き、妙な人を見つけたそうだ。
後ろから見て、黒い帽子をかぶっているのだと思ったらしいのだが、それがカツラ。
しかし、うなじの方まで地肌が侵攻していて、カツラで隠れていない。
髪の間に逆三角の地肌が見えて、まるで後頭部が笑っているみたいだったとか。
カツラの人、
どうか、慎重に、丁寧に装着していただきたい。
周りの人のためにも。

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