食欲は落ちないし、ジムにも通っているが、夏バテだ。
なぜか?
夜寝られないのだ。
「もともと寝るのが下手」+「暑いのが苦手」なのだ。
睡眠不足の上に腰痛が出た。
そんな理由で今日はジムを休んだ。
ジムを休むと、選択はふたつ。
まっすぐ家に帰るか、寄り道をして帰るか。
寄り道するとしたらどんな店か。
もちろんのれんの出ている店だ。
のれんには二つの意味がある。
「ライン」と「合図」だ。
「ライン」とはもちろん店の中と外を仕切るラインのことだ。
このラインが店の主人と客との駆け引きで重要になる。
客が玄関を開けると、店のものは「いらっしゃい」と挨拶する。
このとき、店からは客の下半身しか見えない。
それだけの情報で店側はいろいろな推理をする。
男か女か、金持ちか貧乏人か、人数は何人か。
客は客で、のれんの切込みから中を観察する。
うまいかまずいか、流行っているかどうか、高いか安いか。
主導権は客にある。
しかし、判定はのれんがするのだ。
客がのれんをくぐってしまったら、「しまった」と思ったとしても、
席について何かを注文しなければならない。
これがのれんマナーなのだ。
逆に、客がのれんをくぐらなかったら、
そのまま玄関を閉めて帰ってしまったとしても、
店主は「ちっ」などと舌打ちをしてはいけない。
それがのれんルールなのだ。
では、のれんの「合図」としての役目はどうか。
のれんが出ているかどうかで、店が開いているか閉まっているか、
遠くからでもわかる。
ただし、のれんが表現するのは「オープン」と「クローズド」だけではない。
もっと日本的で微妙でナイーブなのだ。
夜更け、カウンターには男の客がひとり、のれんをしまう女将。
「おや、もうカンバンかい」
「ううん、いいのよ、ゆっくりしてって」
「でもさ・・・」
「アタシも一杯飲もうかな。ねぇ、付き合ってよ」
「いいのかい?」
「いいからいいから、さ、カンパイ!」
そして、しっぽり。
このように
「お店はクローズドだけど、あなたにはオープンよ」
などの複雑な感情も表現できるのだ。
で、今日はどんなのれんもくぐらずにまっすぐウチに帰って来た。
あの店に行くほどお金を持ってなかったし、
あっちの店に遠回りするような元気もなかった。
何よりも、そんな小粋な女将さんのいる店を知らないのだ。
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