作業中、ゴキビーが出た。
私が作業しているところから、ほんの数メートル先のガラクタ置き場への勇気ある横断だ。
その間に彼が身を隠す場所はない。
しかし、ヤツもタイミングを見計らっていたらしい。
こちらは完全に虚を突かれた格好だ。
手に持っているのは黒マジックだけ。
アワアワしているうちにも、ヤツは目標を達成しようとしている。
「踏んでやる!」
決心は早かった。
ただ、一筋の毛ほどの躊躇があった。
足の下でつぶれたらやだな、という考えが頭の片隅に浮かんでしまったのだ。
足はヤツの上に「乗った」だけだった。
ヤツは「うっ」ぐらいのダメージで、方向転換。
私が作業している荷物のパレットの下に入ってしまった。
こいつは困った。
このパレットは向こうとこちらに出入り口がある。
こちらから薬を噴けばあちらに逃げるし、あちらからやっても同じことだ。
ちょうどそこに配達のO川が帰ってきた。
O川にフォークリフトで荷物を持ち上げさせ、そのままどすんと押しつぶしてやる。
荷物の重量、パレット抜きで1.16トン。
ゴキビーをつぶすには十分だ。
リフトで持ち上げた。
・・・いない!
いうまでも無く、ヤツはパレットの側に引っ付いていた。
おのれ、許さぬ!
ほうきを手に取った私は、パレットのすきまをめがけ、えい、やー!
ポトリと落ちたゴキビーに、これを見逃してなるものかと、
稲妻のごときほうきの一閃!
こみ武勇伝ゴキビー退治の巻、なかほどでございます。