翌日は有給休暇を取ったので、残ってる人に「よろしく」と頼んでから実家に向かった。
仕事が終わってから実家に行くのはこれで最後だ。
とうちゃくすると、母が妙な位置で立っていた。
何かをしようとして立ち上がって忘れてしまったらしいが「よう来てくれた」と迎えてくれた。
もうすぐ夕食なので食卓の席に座らせる。
冷蔵庫の食材も翌朝の分だけあればいいので食べ放題だ。
というほどは残ってなくて、とりあえず母の好物、手羽と新タマネギとシメジの煮物を作る。
これはいつもの器に入るだけが明日の朝食用で、残りが夕食のおかずになる。
電子レンジ物で肉じゃがと塩サバとシューマイがあったのでどれが食べたいか訊いたらシューマイを選んだ。
あと、カボチャの煮物とピリ辛キュウリとインスタントみそ汁でいいだろう。
母はさっそくカボチャを湯飲みのお茶に入れ、シューマイはみそ汁に浸けた。
どうやら熱いものは冷まし、冷たいものは温めたいらしい。
子の習性も施設のスタッフさんに伝えておいた方がいいだろう。
食後、私が洗い物をしていたら、母がトイレに行きたいと言い出した。
ついてすぐおかしな位置に立っていた時「トイレ行く?」と訊いたら拒否したのに。
このタイミングでトイレに行くと、寝る前に行きたがらないのではないかと心配だが、
「行きたい」というのを行かせないわけにはいかない。
寝るのが遅くなっても今日はお付き合いしよう。
せっかくトイレに行ったので、そのままパジャマに着替えてもらった。
コタツに入っておっさんたちが料理を作る番組を一緒に観ていた。
8時前になったら母がウトウトし始めたので「もう寝るか」と訊いたら「寝る」という。
「寝る前のトイレに行くか?」と訊いたら素直に「行く」と言った。
トイレが済んだら寝室へ誘導する。
天気が悪いのでヒザが痛むらしい。
やっとのことでベッドに腰かけたので、ちょっとお話をする。
「ヒザが痛い人を見守ってくれる施設ができて、新しくてきれいな部屋をもらえて、
その部屋にトイレも洗面もあって段差はなくて、ごはんも出してくれて、お風呂も入れてくれて、
ずっと看護師さんと介護士さんが見守ってくれていて、そこがいつものデイサービスの隣で、
顔見知りの人がいっぱいいるんやけど、そこへ入ろか」
と数日前からほのめかしていたことをはっきり訊いた。
「入る」
よかった。
明日はワシとちづるさんが朝から来るからな。
今日はデイサービスで疲れたやろからゆっくり寝てな。
ほな、おやすみ。
と寝かしつけるのもこれが最後。

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