居酒屋で

ここでは、居酒屋で に関する情報を紹介しています。
いつもの居酒屋に入るとカウンターは二席だけ空いていた。
一番奥の席に一人、二つ空いてずらりと常連が並んでいる。
この、まるで「!」マークのような配列で「・」の役目をしているのは、
過去に二度だけこの店で会ったことのある常連希望者ではないか。
彼は私の顔を見ると、隣のイスを引いて「さあどうぞ」と誘導した。

初めて彼と会ったのは10週間前。
偶然隣り合わせて座り、しばらくすると話しかけてきた。

「かなりの常連さんですよね」

「いえ、それほどでも」

「写真が一番たくさんあります」

この店のカウンターの正面にはいろんな写真やら名刺やらが貼ってある。
確かに私の写真は多い。
トナカイの恰好の、カラオケでシャウトしてる時の、女子にくっつこうとしているときの。
それを見てそんな判断をするとは、こやつ探偵か?

話を聞くと、ここの常連になりたいらしい。
奥さんが子育てで忙しくて彼が外に飲みに行くのをよく思っていないのだが、
会社の人に誘われるとスナックで朝方まで飲んで大金を払う。
だから、安い居酒屋で軽く飲む代わりに回数を増やしたいのだそうだ。


次に会ったのが2週間前。
つまり2か月ぶりのご来店だ。
その日は給料日だったので奥さんにお願いして飲みに来たという。
理想は2週間に一度ぐらいここで飲みたいのだそうだ。

週一だったら同じ曜日の仲間ができるのに、と言うと、
「いやいや、それはちょっと……」
と言葉を濁す。
奥さんの監視は厳しいようだ。


そして2週間後の昨日。

「2週間で来られました」

「おめでとう!」

これからできたらこのペースで飲みに来て、いつか“常連”の称号を手に入れたい彼。
そのために育児にも手を染めて、手を染めてはおかしいか、積極的になり、
奥さんに気持ちよく送り出してもらえるように努力しているのだ。


そこへやってきたのが電気椅子のはるちゃん。
空いていた私の隣に座ったので、二人を紹介した。
期間限定で伊勢に来ているのにすっかり常連になったはるちゃんは、
またもや期限が迫ってきて延長のために人数増やしに躍起になっている。

「明日、そこのスーパーの電気椅子コーナーに来なさい」

「ええ~、それってあの、なんか、ええと……」

「来なさい」

探偵君はゆっくりと、しかし確実に常連になりつつあると思う。





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定位置ではある
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いつもの居酒屋、閉店間際。
店に残っていたのは私と坊主頭Fとお客で来ていたMえのほかちらほら。
もうそろそろ帰ろうかという時、坊主頭Fがモスバーガーに行こうと言い出した。


坊F「モスバーガー食べたくなった。行こう」

Mえ「でもモスバーガーって閉店時間が0時になったんよ」

坊F「前は何時やった?」

Mえ「2時」

坊F「大丈夫、行ける」

Mえ「えー、行って注文したらもう帰る時間やん」

坊F「そしたら旧道の方のモスバーガーはどう?」

Mえ「旧道の方?」

坊F「パチンコ屋の近くの」

Mえ「あー、あそこはダメ。すごくテキトーやもん」

坊F「テキトー? 何がいかんの?」

Mえ「なんか本当は開いてる時間やのに閉まっとるときあるんやもん」

坊F「でも2時までやっとんやろ?」

Mえ「どうか知らんけど、閉まっとるときは閉まっとるよ」

坊F「大丈夫やろ、行ってみよ」

Mえ「いかんって、本当にテキトーやもん」

坊F「でも2時までなんやろ」

Mえ「そうかもしれんけど、閉まっとるときは閉まっとるんやって」

坊F「行ってみよや」

Mえ「いかんって、閉まっとるとき閉まっとるんやから」

坊F「閉まってないやろ」

Mえ「いやホント、閉まっとるとき閉まっとるんやから~」

坊F「行こう」

Mえ「閉まっとるとき閉まっとるって!」


こみ「どんな店も“閉まっとるとき”は、閉まっとるんじゃー!」


女将「ああ、ホントやなあ」





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店員が見てみたい
いつもの居酒屋は連休中も大繁盛でカウンターはいっぱいだった。
そこへMえがお客としてやってきた。
仕方ないので一席だけ空いていた座敷に座るMえ。
それを見たある社長さんが、

「Mえちゃん一人で寂しそうやないか。あっちに移ろう」

と提案した。
その結果、社長とスキンヘッド2号、私とMえで座ることになった。

この社長が悪い人で、Mえにこっそり耳打ちする。
Mえ大好きのⅩ氏が居たので、こっちに誘ってやったら?と言うのだ。
で、Ⅹ氏が喜んでこっちに移ってこようとしたら、
手前に座っていたMえを奥に移動させ、私がMえとX氏の間に入るようにした。

その配置でしばらくおしゃべりしていたのだが、
Mえが「あ~疲れた~」と言ったらX氏が、

「今日は僕がMえちゃんの肩を揉む!」

と宣言した。
その後悪い社長は無責任にもカウンターに戻ってしまい、
揉みたいX氏、揉まれたくないMえ、こっそりMえ好きの2号と私が取り残された。
バイトの時間を終了したAりがそれを見てゲラゲラ笑いながら帰って行った。


そんなことよりMえの話。
以前、ここにも書いたことがあると思うのだが、
就職先のおばさんに「一度息子と食事に行ってほしい」と言われていた。
三人ほどにそういわれていたらしいのだが、そのうちの一人が強引で、
断われずにいるうちに、ついに一度食事に行くことになってしまった。

いや、本人は断るつもりだったのだが、周りが「どんな男か見て来い」とあおったのだ。
Mえが指定された中華料理店に行くと、

「奥の桜の間でお待ちです」

と、まったりした個室に案内された。
中にはそのおばさんと、きっちりネクタイを締めたその息子が待っていた。
まるでおみあいではないか。

その息子がどんな人だったか聞くと、
まさに、母親にデートをセッティングされるような男、だったそうだ。
で、食事がすんでさっさと帰ってしまったMえ。
今どうなっているかと言うと、

「お願いだから一回だけ、息子とカラオケに行ってやって!」

とそのおばさんに懇願されているらしい。





↑その後社長にスナックに連れていかれて深夜になったけどクリックしてね。






若い人に任せて
Aりが引き受けた仕事は、徐々に複雑になっていった。

依頼主は、去年からいつもの居酒屋に来るようになったおっさんだ。
日曜日に孫が野球の試合に出るので弁当を届けてほしいということだった。
自分はその試合を見なければならないので代わりを頼まれたのだ。
バイト代を払うというので彼女は引き受けた。

届ける弁当は、最近できた唐揚げやさんの弁当だ。
そのチーム全員分、38人前。
注文してある弁当を引き取って届けたらいいのかと思いきや、
まずその店をネットで検索して注文するところからだ。

その孫の親、つまりおっさんの娘は、そのへんの弁当屋に頼むつもりだったらしい。
しかしおっさんがいい恰好をしたくてその店を選んだようだ。
一人当たりの予算は決まっているのだが、オーバーした分は自分が持つという。

で、「どの弁当を注文したらいいの?」と訊くと、
「娘と話し合って決めてくれ」と言って、娘に電話をかけた。
要するに、めんどくさいことは全部やってくれということだ。
Aりは、娘にその店のサイトを教え、メニューを決めてもらって注文し、
当日取りに行って、球場に38人前の弁当を届けることになった。


Aりが頼まれている現場に居た私は、次に居酒屋でAりに会った時、
「たいへんな役目を仰せつかったなあ」
と慰めてやった。
すると、その後別の頼まれごともするようになったというではないか。

そのおっさんがなにやら植物を持ってきて、その写真を撮るように頼まれたらしい。
おそらく仕事で扱っている商品なのだろう。
その写真を撮って、誰かおっさんの知り合いに送るのだそうだ。
Aりのスマホで。

ということは、Aりは見知らぬ人にアドレスを知られることになる。
電話代だってかかるのではないのか。
私はスマホのことに詳しくないが、若い女子ならなおのこといやなのではないかと思った。
Aりははっきりものをいうタイプの子なのだが、お人好しな一面もある。
写真を撮るのは引き受けたが、それを送る係にされるとは思っていなかったのだろう。

念のため、会社でスマホなどに詳しいSちゃんにこの話をしてみた。
「そんなの絶対ありえへん!」
聞けばそのおっさんの仲間だけでなくアドレスの拡散につながるし、
相手がLINEでも始めたらつながってしまう恐れがある。
若い女子でなくても嫌がるパターンだ。

だからAりに頼まれた。
「また写真撮るように言われたら助けてなー」
おっさんもお客なので角の立たないようにやんわりと、
でも写真をと撮らなくていいように納得してもらわなければならない。

このAりの依頼もなかなかの難問ではないか。






↑簡単な依頼だからクリックしてね。





道具があるのに
いつもの居酒屋のカウンターは常連と常連の知り合いでいっぱいだった。
坊主頭Fが来たときには空きが無く、彼は誰もいない座敷のひとつに座った。
バイトのAりが「こみ、移ったら」と言うので私が移動した。
なんとなく客の出足の悪い、静かな感じの日だった。

女の子が一人やって来て、一番奥の座敷に入った。
おそらくここでまちあわせなのだろう。
Aりが箸とおしぼりを持って注文を取りに行くと、その女の子は、

「オススメはなんですか?」

と訊いた。
地元の特産品があるわけでもなく、特に推している名物メニューも無い店だ。
Aりは隣の座敷に居た私とFに「オススメって何?」と訊ねた。
我々は若い女の子のことだし、サラダ系やら揚げ物やらを挙げてみた。

とりあえず飲み物と二品ほど注文した後、Fが話しかけてみた。
聞けば期間限定で伊勢に来たばかりで、ひとりで地元の店を探索していたらしい。

「だったらこっちへおいでよ」

「いいんですか?」

女子がこの座敷に来たことでカウンターがざわついた。
スキンヘッド1号と3号が「何だ、どういうことだ!」と立ち上がる。
先にお酒と箸を持って移動してきたのは1号だ。
1号の勝ち~。
負けた3号はしばらくするととぼとぼと帰って行った。

店が全体的にヒマなのでAりが食事を持って私の隣に来た。
食べながらその女の子の話を聞く。

生まれも育ちも横須賀で、仕事の関係で日本中を移動する27歳。
しゃべりが達者で滑舌がよく、アディダスネオなんてものを着ている。
あっという間に全員の名前を憶え、違和感なくメンバーに溶け込んだ。

食事が終わると、Aりは私に背中を向ける。
肩を揉めという催促だ。
まあ、若い女子に接触する貴重なチャンスなので揉んであげる。

するとその女の子が「やらせてください」と言ってこちらへ来た。
マッサージ機の実演みたいなことをやっているのだそうだが、自分も揉めるという。
なんだかつかみながら曲げたり伸ばしたりしている。
Aりが「うっ、いい!」と声を上げた。

どこが凝っているとか普段の姿勢がどうとか、まるで専門家のようだ。
みんなが口々にこういう。

「本物のやつや!」

つまり私の肩もみはニセモノなのだ。
Aりが勧めるので私も揉んでもらった。
つまり、このやり方を覚えろということだ。
そこへ突然Mえがお客でやってきて「私ももんでー」
Mえが揉まれている横で、Aりが「こみ足揉んで」という。

数か月はこの地に居るという彼女。
新メンバーに認定された。





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仲よくしよう